Google Workspaceが向いている会社・向いていない会社。中小企業の判断基準
社内のファイル共有を改善したい。メールやスケジュールもまとめて管理したい。将来的には、AIや業務の自動化も活用したい。
このような相談に対して、FP SupportersではGoogle Workspaceを推奨することがあります。
ただし、すべての会社にGoogle Workspaceが最適だと考えているわけではありません。
Excelのマクロを業務の中心で使用している会社や、取引先とのやり取りでWordやExcelの完全な互換性が欠かせない会社では、Microsoft 365を中心に整える方が合理的な場合があります。
結論から言うと、Google Workspaceが向いているのは、メールやファイルをクラウドへ移すだけでなく、情報共有と仕事の進め方を会社全体で見直したい企業です。
どの製品が優れているかではなく、自社が解決したい問題と運用体制に合っているかで判断することが大切です。
Google WorkspaceはOfficeの代用品ではない
Google Workspaceを検討するとき、「Wordの代わりがGoogleドキュメント」「Excelの代わりがGoogleスプレッドシート」と考えることがあります。
もちろん、文書や表を作成する基本的な機能はあります。
しかし、Google Workspaceの価値は、Officeソフトを別のソフトへ置き換えることだけではありません。
次のような仕事を、同じアカウントとクラウド環境でつなげられる点に特徴があります。
- Gmailでメールを受ける
- カレンダーで予定を共有する
- Meetで打ち合わせをする
- Chatで社内連絡をする
- Driveへファイルを保存する
- ドキュメントやスプレッドシートを共同編集する
- フォームで情報を集める
- 収集した情報をスプレッドシートへまとめる
- 必要に応じて業務の自動化や簡易アプリへ広げる
Google Workspaceの公式サイトでも、Gmail、カレンダー、Meet、Chat、Drive、ドキュメント、スプレッドシート、フォームなどが一つのサービスとして提供されています。Google Workspace公式サイト
個別の機能だけを見るのではなく、日々の仕事を一つの環境でつなげられることが大きな特徴です。
私たちがGoogle Workspaceを推奨する理由
FP Supportersが中小企業へGoogle Workspaceを推奨する理由は、主に4つあります。
1.ファイルを「個人のもの」から「会社のもの」に変えやすい
中小企業では、重要なファイルが社員のパソコンや個人のマイドライブに保存されていることがあります。
この状態では、担当者が休んだり退職したりしたときに、会社が必要な情報を確認できません。
Google Workspaceの共有ドライブでは、ファイルを個人ではなく組織が所有する形で管理できます。
作成者が退職しても、共有ドライブ内のファイルは組織に残ります。Googleも、共有ドライブのファイルは個人ではなくチームに属し、メンバーが離れた後も残ると説明しています。共有ドライブの公式説明
これは、専任のIT担当者がいない会社にとって大きな意味があります。
情報を特定の社員へ依存させず、会社として引き継げる状態を作りやすくなるためです。
2.一つのファイルを複数人で編集できる
メールへファイルを添付して送り合う運用では、同じ資料のコピーが増えていきます。
例えば、次のようなファイルが並ぶことがあります。
- 見積書.xlsx
- 見積書修正版.xlsx
- 見積書修正版2.xlsx
- 見積書最終版.xlsx
- 見積書最終版・確認済.xlsx
どれが現在のファイルなのか、名前だけでは判断できません。
Googleドキュメントやスプレッドシートでは、複数人が同じファイルを編集できます。
ファイルを送り合うのではなく、同じ場所にあるファイルを確認する形へ変えられます。
変更履歴から、誰がいつ編集したかを確認し、以前の状態へ戻すこともできます。Googleの変更履歴に関する公式説明
単に便利になるだけでなく、最新版が分からなくなる問題や、修正内容が失われるリスクを減らせます。
3.情報を集めた後の作業までつなげやすい
Google Workspaceは、ファイルを保存するだけでなく、情報を集め、その後の作業へつなげる用途にも使えます。
例えば、次のような使い方があります。
- 現場からGoogleフォームで作業報告を送る
- 回答をスプレッドシートへ自動的にまとめる
- 写真や資料をDriveへ保存する
- 担当者へメールやChatで通知する
- 集まったデータをグラフで確認する
- 必要に応じて承認や転記を自動化する
これまで紙、電話、メール、Excelに分かれていた仕事を、小さな範囲からつなげられます。
最初から大規模なシステムを導入する必要はありません。
日報、点検記録、問い合わせ管理、備品申請など、現在手作業で行っている業務から始められます。
4.専任のIT担当者がいない会社でも始めやすい
中小企業では、総務担当者や経営者がIT管理を兼務していることがあります。
そのため、高機能なシステムを導入しても、設定や運用が複雑だと定着しません。
Google Workspaceは、普段からGoogle検索やGmailを利用している人にとって、操作の考え方を理解しやすい傾向があります。
また、パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレットからも利用できます。
ただし、「分かりやすいから説明なしで使える」という意味ではありません。
共有範囲、保存場所、アカウント、退職時の処理など、会社としてのルールは必要です。
Google Workspaceが向いている会社
次のような会社では、Google Workspaceを活用しやすいと考えられます。
- 社員がファイルをメールへ添付して送り合っている
- ファイルが社員のパソコンに分散している
- 担当者が不在だと業務が止まる
- 外出先や現場から情報を確認したい
- 社内に専任のIT担当者がいない
- 複数人で同じ資料を編集したい
- Excelの複雑なマクロをあまり使用していない
- Gmail、カレンダー、Driveなどをまとめて利用したい
- 紙やExcelへの転記作業を減らしたい
- 将来的にAIや業務の自動化も活用したい
特に、製造業、建設業、物流業、士業など、事務所と現場の間で情報を共有したい会社には活用の余地があります。
Google Workspaceが向いていない可能性がある会社
一方、次のような会社では、Microsoft 365の継続や、別の仕組みを検討した方がよい場合があります。
- Excelマクロが業務の中心になっている
- 複雑なExcel関数や外部データ連携を多用している
- Word文書の厳密なレイアウト維持が必要
- 取引先がMicrosoft 365を前提に共同作業している
- Microsoft製品の管理体制がすでに整っている
- インターネットへ接続できない環境での利用が多い
- 大容量の設計データなど、別の専用ストレージが必要
- 社内の仕事の進め方を変える予定がない
- 導入後のルールを決める担当者がいない
Google Workspaceへ移行することで、かえって作業が増える業務もあります。
現在の仕組みが安定しており、困りごとも明確でなければ、無理に変更する必要はありません。
買い切り版Office、Microsoft 365、Google Workspaceの判断については、買い切りOfficeで十分?中小企業がファイル共有と費用対効果を見直す方法でも詳しく解説しています。
導入前に確認したい5つのこと
Google Workspaceを契約する前に、次の5点を確認します。
1.何を改善したいのか
「クラウド化したい」「DXを進めたい」だけでは、導入目的が曖昧です。
例えば、次のように具体化します。
- 見積書を探す時間を減らしたい
- 現場の日報を事務所ですぐ確認したい
- 退職者のパソコンにデータを残したくない
- 会議資料をメールで送り合うのをやめたい
- 問い合わせ情報の転記を減らしたい
解決したい問題が決まれば、最初に使う機能も決まります。
2.Officeを残す業務はどれか
すべてのWordやExcelをGoogle形式へ変換する必要はありません。
マクロ、複雑な帳票、取引先指定のファイルなど、Officeが必要な業務を確認します。
Officeを残す部分とGoogle Workspaceへ移す部分を分けることで、移行時の混乱を減らせます。
3.会社として残すファイルは何か
顧客資料、契約書、見積書、図面、社内マニュアルなど、会社として引き継ぐ必要があるファイルを確認します。
継続利用する資料は、個人のマイドライブではなく、共有ドライブへ保存することを基本にします。
4.誰が管理するのか
Google Workspaceには、アカウント、共有範囲、セキュリティなどを設定する管理者が必要です。
経営者だけ、または外部業者だけに権限を集中させず、会社として管理を継続できる体制を作ります。
5.社員へどう説明するのか
保存場所や共有方法を変更すると、社員から不安や抵抗が出ることがあります。
一度にすべてを変更するのではなく、対象となる業務や部署を絞って始めます。
操作方法だけでなく、「なぜこの運用へ変えるのか」まで説明することが重要です。
導入は一つの業務から始める
Google Workspaceには多くの機能があります。
しかし、最初からすべてを使う必要はありません。
例えば、次のような小さな範囲から始められます。
- 会議資料を共有ドライブへ保存する
- 社内予定をGoogleカレンダーで共有する
- 日報をGoogleフォームへ変更する
- 一つの管理表をスプレッドシートで共同編集する
- 社内連絡の一部をGoogle Chatへ移す
一つの業務で使い方が定着したら、次の業務へ広げます。
機能の数ではなく、実際の仕事が一つでも改善されたかを確認しながら進める方が、社内へ定着しやすくなります。
共有ドライブを使い始める方法については、Google Workspaceを入れたのにPCへ保存してしまう。共有ドライブを使うための最初の一歩で解説しています。
導入より、運用を変える方が難しい
Google Workspaceの契約や初期設定は、導入の始まりにすぎません。
実際に難しいのは、社員がこれまでの保存方法や仕事の進め方を変えることです。
- PCへの保存を続けてしまう
- マイドライブと共有ドライブの使い分けが分からない
- 共有リンクを作らず、メールへ添付してしまう
- 誰にどの権限を付けるか決まっていない
- 退職時のアカウント処理が決まっていない
- 一部の社員しか新しい方法を使わない
こうした問題は、ツールの設定だけでは解決しません。
業務に合わせたルールを作り、実際に使いながら見直す必要があります。
FP Supportersが支援するのは「導入」より「定着」
FP SupportersのGoogle Workspace運用支援では、アカウントを作って終わりにはしません。
最初に現在の業務とファイルの状態を確認し、Google Workspaceへ移すもの、Officeを残すもの、ほかの仕組みを使うものを整理します。
そのうえで、次のような支援を行います。
- アカウントと管理者権限の整理
- 共有ドライブの設計
- フォルダとファイル名のルールづくり
- Officeファイルの扱い方の整理
- 社員への説明と操作支援
- 退職・異動時の運用づくり
- フォームやスプレッドシートを使った業務改善
- 必要に応じた自動化や簡易アプリ化
目指すのは、FP Supportersがいなければ使えない状態ではありません。
会社自身が日々の運用を続け、必要に応じて改善できる状態です。
まとめ
Google Workspaceは、すべての中小企業にとって最適なサービスではありません。
Excelマクロや複雑なOffice文書を中心に業務を行っている会社では、Microsoft 365を活用する方が適している場合があります。
一方、次のような会社にはGoogle Workspaceが向いています。
- ファイルを個人のパソコンから会社の共有場所へ移したい
- メール添付によるファイル共有を減らしたい
- 担当者が不在でも業務を続けられるようにしたい
- 複数人で同じ資料を編集したい
- 現場と事務所の情報共有を改善したい
- 小さな業務改善から始めたい
Google Workspaceを選ぶ理由は、機能が多いからではありません。
会社の情報を個人から組織へ移し、社員同士が同じ情報を見ながら仕事を進められる環境を作りやすいからです。
製品を比較する前に、まず自社がどの業務を改善したいのかを整理する。
そして、Google Workspaceが適しているなら、一つの業務から導入し、使い方を社内へ定着させる。
それが、契約した機能を無駄にせず、費用以上の効果を得るための進め方です。